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DXは何から始める?ツール導入前に見直す業務プロセスと進め方

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今ある業務をそのままデジタル化すると、不要な工程まで残しかねません。業務の必要性と役割分担を見直し、判断に必要なデータを取得する。営業支援の実例をもとに、小さく試して横展開するDXの進め方を解説します。
目次

事業が広がり、社員も増えた。それなのに、仕事の進め方は以前のまま。特定の人に仕事が集中し、目的の曖昧な承認や事務作業が残っている。筆者が企業の業務改善を支援するなかでも、こうした状況に出会ってきました。「便利なツールを入れれば解決するのでは」と考えたくなりますが、現在の業務を前提に導入を進めてよいのでしょうか。実際の営業支援を振り返りながら、DXに着手するときに考えたい順序を整理します。

1.業務を棚卸しし、不要な工程と必要な工程を見極める

DXに向けて業務を変えるなら、最初に確認したいのは、今ある仕事が本当に必要かという点です。DXとは、データやデジタル技術を活用して、業務や組織、事業のあり方を変え、顧客への提供価値や競争力を高める取り組みです。この記事では、その出発点となる業務プロセスの見直しに焦点を当てます。

今の業務を、そのままシステム化の対象にしない

業務の棚卸しは、今ある仕事をすべてシステムに載せるための作業ではありません。何を残し、何を変えるべきかを判断するために行います。

業務の棚卸しとは、誰が、何を、どのような手順で行っているかを整理することです。担当者や作業時間に加え、「何のための仕事か」「成果物を誰が何に使うか」まで確認します。会社が成長すれば、必要な役割や確認事項も変わります。以前は必要だった工程が、今も同じ形で必要とは限りません。

ここを確かめずにツールを選ぶと、本来なくせる承認や資料作成まで、効率化の対象に含めてしまいます。IPAの解説(2023年)でも、現状の人手作業をそのまま自動化する問題と、必要最小限の工程を設計する考え方が示されています。[1]

工程を減らすだけでなく、品質と責任分担を整える

業務の見直しでは、不要な工程を削る一方で、必要な確認が抜けていないかも点検します。

筆者が支援した企業では、形骸化した承認プロセスが残る一方、対外的な資料の品質を担保する仕組みが曖昧でした。資料は担当者の判断で作成され、営業担当者にも渡されていましたが、会社のポリシーに準拠しているかを確認する責任分担が明確ではなかったのです。

そこで、不要な工程を削除しつつ、品質を担保する担当者を配置し、資料の内容を裏付ける一次情報を収集する工程を追加しました。単に承認の数を減らすことが目的ではありません。必要な品質を確保できるよう、工程と責任を組み直すことが重要です。

標準化とは、必要な業務の手順や判断基準、役割分担をそろえることです。現状のやり方をそのまま統一する前に、残すべき業務と必要な確認を見極める必要があります。

2.必要なデータを集め、担当者の割り当てを変える

データ活用は、業務を整えた後にだけ行うものではありません。何を判断するために、どの情報が足りないのかを考え、その取得方法を業務に組み込むことも、重要な取り組みです。

顧客情報の不足が、営業担当者の割り当てを難しくしていた

筆者が複数店舗を持つ企業のセールスDXを支援した際には、顧客の状況に応じた担当者の割り当てができていませんでした。

トップ営業が成約の見込みの低い顧客に対応する一方で、見込みの高い顧客を経験やスキルの十分でない社員が担当することもありました。現場では、見込みの高い顧客を成約につなげられず、他社に流れてしまうことが課題になっていました。ただし、個々の失注を担当者のスキルだけで説明できるわけではありません。

根本にあったのは、顧客の見込み度を判断する情報がなく、担当者をほぼランダムに割り当てていたことです。また、トップ営業は多くの事務業務も抱えており、顧客対応に使える時間にも制約がありました。

事前アンケートと業務削減で、顧客対応の仕組みを変えた

この支援では、顧客情報の取得、担当者の割り当て、不要な事務業務の削減を組み合わせました。

まず、顧客の見込み度を判断するために必要な情報を分析・精査しました。そのうえで、顧客の回答負荷が高くならないよう、事前のWebアンケートやヒアリングで情報を取得し、担当者の割り当てに使うようにしました。

同時に、トップ営業が行っていた不要な事務業務も減らしました。適切な担当者を選べても、その人に対応する時間がなければ、狙った運用はできないからです。

見直す対象改善前実施した変更
顧客情報見込み度を判断する情報が不足必要な情報を精査し、事前アンケート・ヒアリングで取得
担当割り当て顧客の状況を踏まえず、ほぼランダムに割り当て取得情報をもとに担当者を割り当て
営業の時間配分トップ営業も多くの事務業務を担当不要な事務業務を削減し、顧客対応の時間を確保

取り組み後、現場では見込みの高い顧客の取りこぼしが減り、トップ営業がそうした顧客に使える時間が増えたことを確認しました。

この事例でお伝えしたいのは、データの取得を、担当割り当てという具体的な判断と、営業が動ける業務体制の両方につなげた点です。

3.試行する店舗を絞り、運用の型を固めてから広げる

業務の見直しは、全社の標準化を完成させてからでなければデジタル化できない、という意味ではありません。範囲を絞り、小さな仕組みと業務変更を試しながら、運用の型を固めていく進め方もあります。

最初から大規模なツール導入を前提にしない

今回の営業支援では、まずトライアル店舗を選び、事前アンケートと業務プロセスの見直しから着手しました。大規模なシステムを最初に導入したわけではありません。

この順序なら、どの情報が判断に役立つか、担当割り当てが実際に機能するかを、限られた範囲で確認できます。運用して初めて分かる課題を修正し、必要な機能が明確になった段階で、追加のツール導入を判断できます。

もちろん、小規模な仕組みだけで全店舗を運営できるとは限りません。規模が広がれば、情報共有や管理の仕組みが必要になります。大切なのは、ツールの機能に業務を合わせる前に、実現したい業務と判断の流れを確かめることです。

効果と運用を確認し、他の店舗でも使える形にする

横展開では、試行店舗での変化を確認するだけでなく、ほかの担当者も実施できる運用の型を整えることが重要です。今回も、トライアル店舗で型を固めたうえで他店舗へ展開しました。

今後、同様の取り組みを行うなら、試行前に確認する指標を決めておくことを勧めます。例えば、顧客の見込み度別の成約率、営業の顧客対応時間と事務作業時間、アンケートの回答負荷などです。成約率を比較する場合は、顧客層や時期の違いにも注意が必要です。

日立ソリューションズの解説(2024年)でも、小規模な改善の定着と、事前の目標に照らした効果検証が示されています。[2] ツールが導入されたかではなく、業務が変わり、目指した成果につながっているかを確かめながら進めます。

DXの最初の一歩は、導入するツールを決めることとは限りません。今の業務で何をなくし、どの判断を変え、そのためにどの情報を得るべきかを整理することから始められます。自社の業務と保有データを照らし合わせ、まず小さく試す対象を見つけることが、具体的な改善への出発点になります。

参考文献

[1] IPA(2023年)「DX推進のための自社の未来の描き方~業務プロセス・業務主体・組織の未来の描き方編~」https://dx.ipa.go.jp/dx-future-column2

[2] 日立ソリューションズ(2024年)「業務プロセス改善で業務効率化、目的や進め方について解説」https://www.hitachi-solutions.co.jp/servicenow/column/column02/

この記事を書いた人

千歳洋行株式会社 統計部

統計・機械学習・Web解析などを用いたデータ分析と、分析結果に基づく業務改善・意思決定支援に取り組むチームです。複数の専門分野・実務経験を持つメンバーが、テーマに応じて企画・分析・執筆を行います。

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監修

柏 良輔

代表取締役/データ活用・業務コンサルティング

九州大学(理学修士)、早稲田大学(経営管理学修士(MBA))。コンサルティング会社および事業会社で、DX推進、データ活用、業務コンサルティング、リサーチに従事。

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