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中小企業のデータ活用事例8選|売上・利益・人材の改善方法

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売上明細、顧客アンケート、商談履歴など、普段の業務データから新しい判断材料が得られます。実際の分析事例と一般的な活用例を通じ、事業課題に応じた分析の選び方と、小さく始める方法を紹介します。
目次

「データ分析が役に立つ」と聞いても、自社の売上や業務にどう関係するのか、具体的には想像しにくいかもしれません。売上ランキングや月次レポートは作っていても、その先にどのような分析ができるのかは、あまり知られていません。

実は、普段の購買明細やアンケート、商談履歴から、商品の意外な組み合わせ、顧客が離れる兆候、従業員の継続勤務意向と関連する要因まで分析が可能です。まずは、事業改善につながる8つの活用例を見てみましょう。

中小企業のデータ活用とは?何ができる?

データ活用とは、売上・顧客・従業員・業務などの記録を、経営や現場の判断に使うことです。単純な集計もデータ活用ですが、分析の切り口を変えると、合計や平均だけでは見えない情報を得られます。

例えば、「売れている商品」と「一緒に買われやすい商品」は違います。また、「満足度の低い項目」が「従業員の継続勤務意向と強く関連する項目」とも限りません。分析によって、取り組むべき課題の見方が変わることがあります。

中小企業庁の『2025年版小規模企業白書』では、デジタル化の取組段階が進んだ事業者ほど、売上・コスト・人材面で効果を感じた割合が高いと報告されています。

以下の8例は、千歳洋行が実際に実施した分析、出典を確認できた企業事例、一般的な分析の活用案を区別して紹介します。

事業課題分析で分かることの例改善に向けた打ち手
小売の売上拡大一緒に購入されやすい商品の組み合わせ関連商品の提案・売場の見直し
人材定着継続勤務意向と関連するアンケート項目人事施策の優先順位検討
顧客満足自由回答に共通する不満・要望改善テーマの抽出
EC・通販購買行動が似ている顧客群顧客別の販促
営業成約と関連する顧客・商談の特徴対応優先順位の見直し
在庫・利益商品別の将来需要発注量・製造量の調整
顧客維持解約リスクが高い顧客フォロー対象の選定
業務効率化時間がかかる工程・待ち時間業務プロセスの見直し

中小企業のデータ活用事例8選|必要なデータと改善方法

1. スーパー:売れ筋ではなく「一緒に買われる商品」を見つける

売上ランキングを見ても、ある商品を買った顧客が、ほかに何を買っているかは分かりません。そこで使うのが、1回の会計に含まれる商品の組み合わせを調べるマーケットバスケット分析です。

例えば、特定の食材と調味料が一緒に購入されやすいと分かれば、献立提案や関連商品を紹介する販促を考えられます。中小企業庁の『2022年版中小企業白書』には、スーパーを運営する株式会社オギノが同時購買分析を使い、毎週の献立提案に活用した事例が掲載されています。[1]

使うデータ: 会計ID、購入商品、購入日時などを含むPOS明細。分析方法: マーケットバスケット分析。打ち手: 関連商品の提案、販促企画の見直し。

ただし、同時購入が多いことだけでは、陳列変更で売上が増えるとまでは言えません。施策後の粗利益や購入点数を確認する必要があります。

2. 人事:満足度が低い項目と、継続勤務意向に関連する項目を分けて考える

従業員アンケートでは、平均点が最も低い項目を優先して改善したくなるかもしれません。しかし、満足度の低さと、従業員が働き続けたいと思うこととの関連は、別に検証する必要があります。

弊社が実施したエンゲージメントサーベイの分析では、単純集計で最も満足度が低かったのは「給与」に関する項目でした。一方、継続勤務意向の回答を目的変数とし、複数項目を同時に考慮する重回帰分析を行うと、「仕事のやりがい」に関する項目が継続勤務意向と強く関連していました。

これは「給与を改善しなくてよい」という結論ではありません。人材定着を考える際、スコアの低い順だけではなく、継続勤務意向との関連性も判断材料にできる、ということです。

使うデータ: 継続勤務意向、給与満足度、やりがいなどのサーベイ回答。分析方法: 重回帰分析。打ち手: 人事施策の優先順位や追加調査の見直し。

ここで分析したのは実際の離職実績ではなく、本人が回答した継続勤務意向です。また、関連性だけで施策の因果効果は断定できません。この違いは以下の記事でも解説しています。

3. 顧客アンケート:大量の自由回答から、共通する不満を見つける

自由回答が数千件あると、すべてを読んで傾向を整理するには時間がかかります。しかも「説明が分かりづらい」「案内が足りない」など、似た内容でも表現が異なることがあります。

こうした文章には、自然言語処理(文章をコンピューターで扱う技術)やクラスタリング(似た特徴のデータをまとめる方法)を利用できます。意味の近い回答を集めて、「説明」「待ち時間」「商品品質」といった改善テーマを整理し、店舗別や顧客層別の違いも調べられます。

使うデータ: 自由回答、利用店舗、商品、顧客属性など。分析方法: 文章分類・クラスタリング。打ち手: 改善テーマの選定、部署への課題共有。

分類結果は自動的に正解になるわけではありません。実際の回答を人が読み、意味のある分類になっているかを確認します。

4. EC・通販:売上金額だけでなく、顧客の買い方でグループを分ける

同じ年間購入金額の顧客でも、少額を毎月買う人と、高額商品を年に一度買う人では、適した提案が異なります。

RFM分析は、最終購入日・購入頻度・購入金額の3つの観点から顧客を分類する方法です。さらに購入商品や購入周期も使ってクラスタリングすれば、行動の似た顧客群を探せます。

継続購入が多い顧客には購入時期に合わせた案内を、特定の商品群を好む顧客には関連商品の提案をするなど、販促の出し分けを検討できます。

使うデータ: 顧客ID、購入日時、購入商品、購入金額。分析方法: RFM分析・クラスタリング。打ち手: メール配信、再購入促進、提案内容の見直し。

顧客を細分化するほど効果が高まるわけではありません。実際に異なる施策を打てるかを基準に、分類の細かさを決めます。

5. BtoB営業:どんな見込み顧客に優先対応すべきかを調べる

商談履歴を蓄積していれば、「どの業種・企業規模の顧客が成約しやすいのか」「問い合わせから初回対応までの時間と成約には関係があるか」などを調べられます。

例えば成約・失注を目的変数にし、顧客属性や商談の条件を説明変数とするロジスティック回帰分析を使えば、複数条件を考慮して成約確率との関連を推定できます。分析結果を参考に、営業先の優先順位や担当者の配置を見直せます。

使うデータ: 顧客属性、流入経路、商談日時、対応履歴、成約・失注結果。分析方法: クロス集計・ロジスティック回帰分析。打ち手: 初回対応の優先順位づけ、営業プロセスの見直し。

過去に営業した顧客だけを分析すると、営業担当者が選んだ顧客への偏りが残ります。結果は「誰に売れるか」の確定的な答えではなく、検証すべき仮説として使います。

6. 小売・飲食:需要を予測し、欠品と廃棄を減らす

食品を扱う事業では、仕入れや製造量が多すぎれば廃棄が増え、少なすぎれば売り逃しが発生します。過去の販売数量に、曜日・季節・予約・天候などを組み合わせると、将来の需要を予測できます。

中小企業庁の『2022年版小規模企業白書』には、洋菓子を製造販売する株式会社ありの子の事例があります。同社は過去の同日売上やWeb上の反応などを参考に需要を予測し、製造量やシフトを調整しました。白書では、SNS活用など複数の取組を経て売れ残りが減り、原価率が50%から32%に下がったと報告されています。[2]

使うデータ: 日別・商品別の販売数量、在庫、欠品、予約、曜日など。分析方法: 過去実績による簡易予測・時系列分析。打ち手: 発注量、製造量、シフトの調整。

最初からAIによる高度な予測は不要です。前年同時期や直近の曜日別平均など、簡単な予測と比較し、廃棄金額や欠品件数が改善したかで評価します。

7. 会員制サービス:解約リスクが高い顧客を予測する

会員制サービスや定期購入では、契約が続いている顧客の中にも、利用頻度が落ちている人がいるかもしれません。

過去の利用履歴と解約実績を組み合わせると、どのような行動の顧客が解約しやすいかを分析できます。例えば、利用間隔が急に長くなった顧客を優先してフォローする、といった運用が考えられます。

使うデータ: 顧客ID、契約期間、利用履歴、問い合わせ、解約日。分析方法: 解約率の比較・予測モデル。打ち手: フォロー対象や時期の見直し。

ただし、解約リスクが高い顧客が、フォローによって引き留められる顧客とは限りません。解約予測と施策の効果検証は別に考えます。

8. 業務改善:処理時間の内訳を調べ、待ち時間や手戻りを減らす

「受注から納品まで時間がかかる」という課題に対し、人員を増やす前に、どこで時間がかかっているかを調べる方法があります。

工程ごとの開始・終了時刻や差し戻し履歴を分析すると、作業そのものより承認待ちが長い、特定の条件の案件だけ手戻りが多い、といったボトルネックが見つかる場合があります。その結果を使って、承認手順や担当者間の業務配分を見直します。

使うデータ: 受付日時、工程別の処理・待機時間、担当部署、差し戻し回数。分析方法: 工程別集計・プロセス分析。打ち手: 不要な工程の見直し、業務の標準化。

そもそも工程の記録がない場合は、対象業務を絞り、まず記録を残すところから始めます。現場へのヒアリングも欠かせません。

中小企業がデータ活用を始める4つのステップ

データ活用を始める際は、ツールや分析手法を先に選ぶ必要はありません。解決したい課題を一つ決め、既存データで小さく検証することが基本です。

ステップ1:改善したい経営課題と判断を決める

「売上を伸ばしたい」だけでは、何を調べるべきか決まりません。「既存顧客の再購入を増やしたい」「人気商品の欠品を減らしたい」など、次の行動を変えられる課題に絞ります。分析の範囲が広がりすぎる問題については、関連記事でも解説しています。

ステップ2:必要なデータがあるか確認する

例えば再購入を調べたいなら、顧客ごとの購入日を追えるか確認します。購入明細がなく商品別の月間合計しかなければ、同時購入の分析はできません。保有データの量だけでなく、必要な粒度で記録されているかが重要です。関連記事で、取得設計の考え方を紹介しています。

ステップ3:簡単な集計を基準に、必要なら分析を深める

まずは期間別・顧客別・商品別の集計から始めます。それで意思決定に十分なら、複雑なモデルは不要です。一方、「複数の要因を同時に比較したい」「大量の文章を分類したい」などの課題が残る場合は、回帰分析や自然言語処理などを検討します。

ステップ4:施策を小さく実行し、効果を測る

分析で発見した傾向が、実際の改善につながるかを確認します。例えば、一部商品だけで陳列を変更し、売上だけでなく粗利益を比較する方法です。できれば変更しなかった商品・店舗も比較対象にし、季節性などの影響を考慮します。

まとめ|データ活用は、今ある業務データの見方を変えることから始まる

中小企業でも、POS明細から商品の組み合わせを調べたり、アンケートから継続勤務意向に関連する要因を分析したり、販売実績から需要を予測したりできます。必要なのは最初から高価なツールを導入することではなく、何を改善したいか、そのために何が分かれば判断を変えられるかを考えることです。

自社でどんな分析ができるか分からない場合も、まずは事業上の課題と、現在保有しているデータを整理するところから始められます。

参考文献

この記事を書いた人

千歳洋行株式会社 統計部

統計・機械学習・Web解析などを用いたデータ分析と、分析結果に基づく業務改善・意思決定支援に取り組むチームです。複数の専門分野・実務経験を持つメンバーが、テーマに応じて企画・分析・執筆を行います。

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監修

柏 良輔

代表取締役/データ活用・業務コンサルティング

九州大学(理学修士)、早稲田大学(経営管理学修士(MBA))。コンサルティング会社および事業会社で、DX推進、データ活用、業務コンサルティング、リサーチに従事。

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