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相関関係と因果関係の違いとは?データを施策に使う前に考えたいこと

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相関から因果へ飛躍すると、誤った打ち手につながることがあります。一方で、因果を完全に証明できるまで動かないのも実務的ではありません。別の説明可能性と現場知を照合し、意思決定につなげる考え方を解説します。
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ニュースや調査で「Aが多い人ほどBが低い」といった結果を目にすると、つい「AがBの原因なのだ」と読みたくなります。最近では、2026年の全国学力・学習状況調査で、SNSや動画視聴等の利用時間が長い児童生徒ほど各教科の正答率・スコアが低い傾向が示されました[1]。

しかし、この結果から直ちに「スマホ等の利用時間を短くすれば学力が上がる」とまでは言えません。大切なのは、データが示している事実と、そこから私たちが加えた解釈を分けることです。本記事では、相関と因果の違い、交絡因子や逆因果の考え方、そして実務でどこまで確認したら意思決定に進むべきかを解説します。

相関関係と因果関係の違いは「一緒に動く」と「変えれば結果が変わる」の違い

相関関係が見つかっただけでは、一方を変えればもう一方も変わるとは限りません。施策を考えるときには、この違いを最初に押さえる必要があります。

「Aの人ほどB」と「Aを変えればBが変わる」は別の話

相関関係とは、2つの変数が一緒に変化する関係です。因果関係とは、一方を変化させることが、もう一方の変化につながる関係です。

日本統計学会誌で岩崎学氏は、回帰分析で「xが1単位大きい人はyも平均的に大きい」と言えることと、「xを1単位大きくすればyが大きくなる」ことは一般には同じではなく、後者の解釈には因果関係が必要だと説明しています[3]。

観測した結果そこから言えることそれだけでは言えないこと
Aが多い人ほどBも多いAとBに関連があるAを増やせばBが増える
Aが多い人ほどBが少ないAとBに負の関連があるAを減らせばBが増える

企業のデータ分析でも、この区別は重要です。「広告接触が多い顧客ほど購入額が高い」という結果があっても、広告接触を増やせば購入額が上がるとは限りません。もともと購入意向が高い顧客ほど広告に接触しやすい、といった別の説明も考えられるからです。

交絡因子や逆因果を考えるのは「別の説明がないか」を確かめるため

交絡因子とは、説明したい2つの変数の両方に関係し、その関係の見え方に影響する第三の要因です。[4]

たとえばAとBに相関が見えたとき、「AがBを変えた」以外にも、「CがAとBの両方に影響している」「実はBがAに影響している」といった可能性があります。後者のように、想定していた原因と結果の向きが逆である可能性を逆因果といいます。

ここで大切なのは、交絡因子を一つ思いつけば元の分析を否定できる、ということではありません。目的は「この因果ストーリーしかない」と早合点せず、ほかの説明可能性を検討することです。

強い相関があっても、因果関係があるとは限らない

この違いを直感的に理解しやすい例が、Tyler Vigen氏の「Spurious Correlations」です。たとえば、米国の1人当たりマーガリン消費量とメイン州の離婚率は、2000〜2009年のデータで相関係数が約0.993と、非常に強く連動しています[5]。

米国の1人当たりマーガリン消費量とメイン州の離婚率が高い相関を示すグラフ
出典:Tyler Vigen「Spurious Correlations」(CC BY 4.0)

もちろん、この相関だけを見て「マーガリンの消費が減ったから離婚率が下がった」と考えるのは無理があります。大量のデータから組み合わせを探せば、因果関係があるとは考えにくい変数同士にも、偶然や共通する時系列トレンドなどによって強い相関が見つかることがあります[5]。

むしろ難しいのは、スマホ利用時間と学力のように、最初から「関係がありそうだ」と感じる組み合わせです。もっともらしい説明が浮かぶほど、相関を見たあとに自分が納得しやすい因果関係を当てはめないよう注意する必要があります。

「スマホ利用時間が長いほど学力が低い」という結果をどう読めばよいか

実際の調査結果を読むときは、「調査が示したこと」と「受け手がそこから解釈したこと」を分けて考えると整理しやすくなります。

調査が示しているのは「利用時間が長いほど学力が低い傾向」

文部科学省・国立教育政策研究所が2026年8月に公表した全国学力・学習状況調査では、平日のスマートフォン等でのSNSや動画視聴時間が長い児童生徒ほど、各教科の正答率・スコアが低い傾向が示されています。相関係数は、小学校国語-0.240、算数-0.252、中学校国語-0.199、数学-0.246、英語-0.257でした[1]。

ここで注目したいのは、公表資料が「利用時間が長い児童生徒ほど、正答率・スコアが低い傾向」と表現していることです[1]。さらに国立教育政策研究所自身も、クロス分析は相関関係がみられるかを分析したものであり、因果関係を示したものではないと注意を促しています[2]。この結果自体を否定する必要はありません。

一方で、受け手がそこから「スマホ等の利用が学力低下の原因だ」「利用時間を短くすれば学力が上がる」と読み替えるなら、分析から一段先の因果的な解釈に進んでいます。

「学習習慣がないから利用時間も長い」も一つの仮説にすぎない

別の説明を考えるなら、「普段から学習習慣がない児童生徒ほど、SNSや動画を見る時間も長いのではないか」という仮説も立てられます。睡眠時間や家庭環境など、双方に関係しそうな要因を考えることもできます。

ただし、ここで「だから交絡因子がある」と断定するのも飛躍です。私たちがこの調査について、その因果構造を検証したわけではありません。

確認すべきなのは、「別の説明はあり得ないか」「調査側ではその要因をどこまで検討しているか」です。交絡という言葉は、元の結果を否定するためではなく、解釈の幅を広げるために使うべきだと考えています。

「交絡かもしれない」と思いついただけで元の結果を否定するのも危険

実際、スマホ等と学力の関係については、別の調査で追加検討が行われた例があります。仙台市教育委員会と東北大学は2015年、無料通信アプリの使用時間と学力の関係を分析しました。研究チームは、通信アプリの使用時間について、勉強時間や睡眠時間を介した影響だけでは説明しにくく、直接的に成績を下げる方向に作用する恐れがあると報告しています[6]。

この研究だけであらゆる要因が排除されたと判断する必要はありませんが、「睡眠時間が交絡しているのでは」と思いついただけで研究結果を否定するのも適切ではありません。

相関から因果を断定しない。同時に、思いついた別要因だけで相関の意味を否定しない。 元の分析で何が検討され、何が検討されていないのかを確認する姿勢が必要です。

実務では「別の説明を考える→現場に聞く→動いて確かめる」

企業の意思決定では、考えられる交絡因子をすべて洗い出し、因果関係を完全に証明できるまで待つことが常に現実的とは限りません。筆者は、別の説明可能性を検討し、現場の知識とも照合したうえで、一定の納得感が得られたら動くことも重要だと考えています。

1.自分が望む結論に合う相関ほど、別の説明を考える

分析では、数字そのものだけでなく、数字を解釈する人の恣意性にも注意が必要です。

筆者が以前見た分析では、「夫の家事参画時間が長い家庭ほど妻の年収が高い」という一つの相関が、「男性の家事参画が女性の社会進出を後押しする」という主張の材料として使われていました。しかし、その分析では妻の労働時間や雇用形態など、別の説明につながる変数を複合的には検討していませんでした。

たとえば、「妻の労働時間が長いから年収が高く、同時に夫が家事を多く担っている」という関係も考えられます。もちろん逆に、「夫が家事を担うから妻が働く時間を確保できる」という関係も考えられます。この相関だけでは、どちらの因果構造なのかは判断できません。

ここで問題にしたいのは、ジェンダー平等という主張の是非ではありません。どのような主張であっても、自分が望む結論とデータが一致したときほど、「ほかの説明はないか」を意識的に考える必要があります。 分析の目的が「正しく理解して打ち手を考えること」から「自分の主張を補強すること」に変われば、データはあっても意思決定を誤る可能性があります。

2.分析結果は、現場を知る人の「腹落ち感」と照合する

統計的な検討だけでなく、現場を知る人に結果を見せることも重要です。筆者は分析結果を提示するとき、「実際の現場で起きていることとして、この説明に無理はないか」を確認するようにしています。

現場の人が感じる違和感から、「その顧客はこういう事情で動いている」「その時期には別の施策が走っていた」といった、データだけでは見えていなかった要因が出てくることがあります。そこから分析をやり直したり、解釈を修正したりできます。

ただし、「現場の人が腹落ちしたから因果関係が証明された」という意味ではありません。現場知は証明ではなく、分析結果の解釈に無理がないかを確かめ、見落としている仮説を見つけるための材料です。

3.因果を完全に証明できるまで待たず、動いた結果も次のデータにする

実務では、分析の正確さと意思決定の速さにはトレードオフがあります。 相関だけを見てすぐに大きな施策を決めるのは危険ですが、考え得る要因を完全に排除できるまで何も動かないのも得策とは限りません。

複数の説明可能性を考える。必要な追加分析をする。現場を知る人にも結果を見せる。そこまで行って一定の腹落ち感が得られたなら、まず動いてみるという判断もあります。

可能であれば、対象を限定して試す、実施前後のデータを取るなど、次に検証できる形で施策を実行します。実行した結果もまた新しいデータです。「想定通りだった」「別の要因が見えてきた」といった情報を次の分析につなげれば、最初から完全な答えを求めるよりも早く理解を深められる場合があります。

相関を因果と決めつけない。しかし、完全な因果証明を待って動かないわけでもない。 データから言える範囲を見極め、別の説明と現場知を照合しながら、意思決定に必要な確度まで分析することが大切です。

データ分析では、計算方法以上に「この結果からどこまで言えるのか」「この確度で意思決定してよいのか」を考えることが重要です。自社データで相関が見つかったときも、分析結果そのものだけでなく、その解釈や次の打ち手まで含めて検討する必要があります。

参考文献

この記事を書いた人

千歳洋行株式会社 統計部

統計・機械学習・Web解析などを用いたデータ分析と、分析結果に基づく業務改善・意思決定支援に取り組むチームです。複数の専門分野・実務経験を持つメンバーが、テーマに応じて企画・分析・執筆を行います。

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監修

柏 良輔

代表取締役/データ活用・業務コンサルティング

九州大学(理学修士)、早稲田大学(経営管理学修士(MBA))。コンサルティング会社および事業会社で、DX推進、データ活用、業務コンサルティング、リサーチに従事。

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